軍事占領下の子どもたち

9. 6月, 2008 • 0 Comments

世界教会協議会(WCC)は、「暴力を克服する10年(2001-2010)」の主要プログラムの一つとして、2002年から「パレスチナとイスラエルにおけるエキュメニカル同伴プログラム(EAPPI)」を行っています。学校や畑への行き帰りなどに同伴することでイスラエル人入植者や検問所の兵士などによる嫌がらせや暴力を抑止すること、また日々の現実を知ってそれを各々の教会に伝えることで平和のための取り組みを進めることを目的として、3ヶ月間毎に、世界の教会から参加者が派遣されています(日本からはまだ参加がありません)。ヘブロンで活動するEA(Ecumenical Accompanier)からの報告を紹介します。


◆「軍事占領下の子どもたち」
2008/4/21

シャルバチ家には6人の子どもがいます。その内の2人は男の子で、13歳と14歳です。住んでいるのはヘブロンのH2(エリアC)で、テル・ルメイダ入植地のすぐ下です。シャルバチ家は1階立ての家に住んでいますが、屋根の上には10年前からイスラエル軍の監視所があります。入植者からの嫌がらせが続いたため、家の裏側の窓は全て塞がれています。(※イスラエルは占領地をパレスチナ自治政府に管轄を許す程度によって3つに分けており、エリアCは行政権も警察権もイスラエルが握っている地域。)

2人の男の子、ハッセムとフッサムは、近所の家の庭でサッカーをしていました。そこに入植者の少女4人が襲撃しにきました。兄弟はハダッド家の門の中の庭に逃げ込んだのですが、少女たちは追いかけて入っていきました。しばらくして少女たちは立ち去ったのですが、イスラエルの兵士たちを連れて戻ってきて、兄弟が石を投げつけたと訴えました。兵士たちは二人の兄弟を逮捕しました。

ISMの代表がこの出来事を目撃していたのですが、兄弟は少女たちの挑発にのるようなことは全くしていなかったと証言しています。入植者たちは兵士に対して正式の訴えは出しておらず、二人の男の子に対して何の告訴もされてはいません。(※ISM=International Solidarity Movement:パレスチナで様々な非暴力直接行動を行っている。)

ハッセムとフッサムは兵士たちに1時間以上拘留された後、やってきた警官にキルヤト・アルバの警察署に連行されました。そこで何の尋問もないまま5時間拘留されました。それからベツレヘム近郊のガッシュ・エツィオンの軍事基地の留置所に連れて行かれ、目隠しをされ、手錠をされました。兄弟はそのまま深夜から朝6時まで過ごし、その後、ラマラにある軍のオフェル留置所に連れて行かれました。そこで兄弟は身体検査され、医師によって調査されました。そしてキルヤト・アルバの警察署から兄弟を戻すように命令が届くまで、拘留が続きました。兄弟が拘留された時から国際赤十字が動いて、解放されることになったのです。

最終的には、キルヤト・アルバで、1500シュケルの罰金と引き替えに、兄弟二人は解放されました。この罰金の額は家族の1ヶ月の収入に相当します。翌朝9時半に釈放されることが決まったのですが、その朝、家に帰れと言われるまで、兄弟は5時間も待たなければなりませんでした。裁判になるのかどうかは説明されませんでした。

これは、たまたま起こった一つの出来事というわけではありません。2007年、18歳以下の700人のパレスチナ人の子どもたちが逮捕されました。年間を通して常に310人~416人の子どもたちがイスラエルの牢獄あるいは拘置所に勾留されている状態でした。2007年に投獄あるいは拘留されたパレスチナ人全体の中で、18歳以下の子どもは4%を占めます。

理由を告げずに拘留することはイスラエルの軍法に則っており、占領地に住むパレスチナ人はその下で生きているのです。国連の特別報告官マーティン・シェイニンは次のように述べています。「東エルサレムの住民を除き、西岸地区でのパレスチナ人の逮捕と拘留は、大体、軍令によってなされている。逮捕の際に拘留する理由は当事者に知らせる必要がないとされている。これは“市民的及び政治的権利に関する国際規約”の9条2項に反しており、さらに“子どもの権利条約”37条b項で“児童の逮捕、抑留又は拘禁は、法律に従って行うものとし、最後の解決手段として最も短い適当な期間のみ用いること”と定められていることに反している。」

ヘブロンのEAPPIのチームは、3月30日、14歳の少年ファディ・イブラヒム・アブダウードのオフェル軍事法廷での裁判を傍聴しました。彼は兵士に向かって石を投げた罪に問われています。しかし現場にいた人や少年と同じアル・アルブ難民キャンプに住む目撃者によると、彼はただ見ていただけで、他の似たような赤いシャツを着た少年と混同されて逮捕されたということです。少年は裁判まで1ヶ月間拘留され、我々が傍聴した裁判は1ヶ月後の次の裁判の日程を決めて15分間で終わりました。再び、少年は、拘置所で1ヶ月間を過ごすのです。

国連人権委員会は、軍事法廷で民間人を裁くのは例外的なケースに限られなければならず、あくまでも対象は軍関係者のみとされるべきであるとしています。また国連の特別報告官は「軍事法廷というものは独立性と不偏性が欠けていると見られるものであり、裁判の公平性に疑問を呼ぶ事実がある」と述べています。

西岸地区の子どもたちは、司法上、おとなと同じ扱いを受けています。16歳以上の子どもは、おとなとして扱われ、おとなの場合と同じ刑罰が与えられます。先に述べたような拘置の延長はよくあることです。イスラエルの団体イェシュディン(YeshDin)によると、彼らが傍聴した9つの子どもの裁判は、平均3分20秒の開廷時間で、どの場合も6~28日間、拘置が延長されたということでした。さらに、判決は、事件時の被告の年齢でなく、結審時の被告の年齢によってなされているということがあります。そのため、拘置の延長は、被告にとって妥協への圧力にもなるのです。

軍事法廷の問題に関わって活動している「子どもの盾 (Defence of Children International)」の代表によると、判決の際のわずかな違いを除けば、子どもとおとなは全く同じに扱われているということです。「全く同じなのです。完全に。訴訟・審理の手続き、全てが同じです。被告が子どもの場合の特別な尋問官なんていません。被告が子どものケースを扱う裁判官はいません。被告が誰であろうと、同じ裁判官がやっています。」

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