核拡散問題に関する世界教会協議会の声明 :: 海辺のノート

核拡散問題に関する世界教会協議会の声明

19. March, 2007 • 0 Comments

2007年3月1日

2月27日から3月2日にかけてジュネーブ近郊のボッセイで開かれていた世界教会協議会(WCC)の常議員会で、核の拡散について世界の諸教会に注意の喚起を促す声明が採択されました。WCCのプレスリリースと声明文本文(原文)を参照してまとめた要点を紹介します。

核不拡散条約(NPT)のような管理のメカニズムが近年の政治的・軍事的な状況のもとで危うくなっている現在、諸教会は、これまで以上に、核兵器の廃絶のための働きを強化すべきであると声明は訴えています。

北朝鮮の核兵器開発、弾道ミサイルテスト、イラン政府がその原子力の平和的利用計画に核兵器開発を隠す意図がないことについて国際社会を確信させそこねていること、イスラエルが国際原子力機関(IAEA)に対して全ての原子力施設の査察を拒絶していること、米国がインドの核兵器保有を「単独主義的外交」によって認めたこと、そして核兵器保有諸国である米国、イギリス、フランス、ロシア、中国が、核兵器の現代化の作業を進めていること、またこれらの国々が軍縮の努力を怠っていることが「二重基準」の状態を悪化させ、核兵器廃絶の手段としての核不拡散条約の妥当性、有効性への世界的な不信感を作り出していることに、声明は注意を喚起しています。また、管理の不徹底によって核兵器や核兵器の材料がテロを手段に選ぶような非国家主体の手に渡ることや、米国やロシアのような核兵器による即応体制がとられ続けている国家では非意図的にあるいは許可を受けずにそれらが使われてしまう危険があることについても注意を喚起しています。

しかしまた、核不拡散条約の加盟国による遵守強化、非加盟諸国による尊重への圧力が高まっているという希望についても述べています。

2006年9月、中央アジア5ヶ国は中央アジア非核地帯を設立しました。ラテンアメリカ及びカリブ諸国、南太平洋、東南アジア、およびアフリカに加え、5つ目の非核地帯ができて、国際社会で核軍縮への取り組みが継続していることが示されたのです。これら中央アジア諸国は、原子力平和利用に関しても国際原子力機関の追加議定書として知られる拡大された保障措置の遵守を法的に定めて、意義ある先例を作りました。

2007年の国連軍縮会議では、9年間にわたる交渉の麻痺状態が終わり、進展のために必要な各国の政治的意思が示されることが期待されています。特に米国と中国は軍縮会議の活動計画に関する不合意を取り下げ、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)、宇宙の軍備競争防止(PAROS)、核軍縮、消極的安全保障(核兵器国が非核兵器国に対して核兵器を使わないことを約束することによって生まれる安全)などの交渉のための枠組みを受け入れ、軍縮会議の行き詰まりを解決するよう、大きな圧力を受けています。

昨年は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准が始まって10年を記念する年でした。軍縮会議によって策定されたこの条約は新しい核兵器の開発を制限する重要な手段ですが、それはまだ発効もしていないのです。1995年、WCCはこの重要な条約の批准を呼びかけました。しかし、調印国の幾つかは未だに批准を終えておらず、また幾つかの鍵となる国家は調印を拒否しています。特に、米国、インド、パキスタンが、CTBT批准に向けて動くことは非常に重要です。そのような動きが示されることは、核兵器の拡散をとめ、北朝鮮、インド、イスラエル、パキスタンにおける軍拡をとめるのに、最も有効であると考えられます。

※ CTBTについて:2006年12月1日現在で、署名国177ヶ国、批准137ヶ国、発効要件国44ヶ国のうち、署名国41ヶ国、批准国34ヶ国。日本は97年に批准。発効要件国のうち、署名済・未批准国:米国、中国、インドネシア、コロンビア、エジプト、イラン、イスラエル、未署名・未批准国:北朝鮮、インド、パキスタン。

核不拡散条約(NPT)の有効性は危機に瀕していますが、その見直し作業はまだ初期段階にあります。2000年のNPT見直し会議において、核軍縮に向けた13箇条の行動計画が採択されました。そこでは「核兵器保有国家が、その保有核兵器の完全な廃絶を成し遂げることを明確に約束する」ことが明記されました。NPTは、核軍縮を義務づける唯一の多国間条約として、重大な意義を持つ国際合意です。

世界の大多数の国家や、新アジェンダ連合に参加しているブラジル、南アフリカ、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、スウェーデンなどが、核不拡散条約と核兵器の完全廃絶を引き続き支持していることは、核拡散の問題は、政治的意思と道徳的堅固さがあれば、有効な取り組みが可能であることを示しています。新アジェンダ連合は、核不拡散と核兵器の完全廃絶を含む軍縮の問題に関して、核兵器保有国を協議のテーブルに着かせることに大きく貢献しました。

WCC常議員会は、加盟諸教会が、核兵器に関して倫理的、神学的な観点から核兵器の廃絶と核抑止論の放棄を求め、それぞれの国の政府と対話を続けるよう求めています。キリスト教は、人のいのちの神聖さと、将来の世代のために全ての被造物を保護すべきことを教えています。核兵器は無差別に人や自然を破壊するものであって、これらの原則を犯すものです。諸教会は、ただ自らが滅ぼされることへの脅威からだけではなく、他の人々を滅ぼしうるような体制の一員となっていることも倫理的に反省するべきです。他の宗教者と共に、核兵器廃絶と核抑止論の放棄のためにできることを模索し、共に行動を起こすことが決定的に重要なのです。これは特に非核地帯とされるべき中東において必要なことです。

☆ 編註:日本政府は、目的は共有するがアプローチに関して見解が異なるとして、新アジェンダ連合に参加していない。ここには地雷廃絶のオタワプロセスに対して取った態度との相似が見られる。有志諸国家の意思の結集を図ることで国際社会の機運と圧力を作り出すやり方が現実的なのか、核保有超大国が交渉に乗れるような条件作りを優先することが現実的なのか、というような方法論の違いがある。日本は、被爆国として、核軍縮をめぐる国際政治でリーダーシップをとることを重視してきたはずだが、核保有国の頑なな態度と新アジェンダ連合の動きの狭間で存在感がすっかり薄れた感が否めない。

※ 外務省のQ&A http://www.mofa.go.jp/mofaj/comment/q_a/topic_40.html

☆ 第9回WCC総会で採択された「核兵器廃絶」に関する決議(英文):
http://www.oikoumene.org/index.php?id=1956

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