礼拝覚書(24) 歌う(2)

8. 10月, 2019 • 0 Comments

旧約聖書の朗唱は、紀元直後の数世紀間に制度化されました。タルムードには、「旧約聖書は公けに読まれ、音楽的な甘美な調べで聴者に理解さるべきである。調べなしで『モーセ五書』を読むのは、聖書とその法則の必須の価値を無視しているのである。深い理解は律法を歌うことによってのみ達成されうる。旧約聖書を世俗歌の様式で吟唱することは律法を乱用することである」とあります。

それはヘブライ語の文章のアクセント化の原理に厳格に基づくものでした。音域は狭く、装飾的な動きも制限されていましたが、これは旋律がことばを妨げないためにとられた故意の手段でした。旋律型(モチーフ)は、聖書の文章のひとつひとつの語にそれぞれ付けられました(ひとつの語=ひとつの旋律型)。「旋律は絶対的にことばに支配される」という朗唱の鉄則によるものでした。(※以上、『ユダヤ民族音楽史』水野信男, 六興出版, 1980 による)

キリスト教は、この「言葉によって」というユダヤの典礼の本質と音楽の伝統を継承して、「サルモディックな歌~詩篇、聖書、祈祷の旋律的かつリズミカルな音楽的な読み/音節的な唱法(シラビック)」を基本としつつ、これもまたユダヤの伝統にあった母音唱法(メリスマティック)、すなわちメロディが言葉に優先される形式の歌を所々に入れる礼拝を形成しました。「メリスマティックな歌は、超越的な現実との接触、“神の国”の超自然的現実性への参入の体験を表現している。…その代表がアリルイヤの歌であった。」(『ユーカリスト』シュメーマン)

やがて、キリスト教の典礼では音楽とテクストが緊密な相互関係を持つより知的に作られた聖歌が生まれ、また詩篇、聖書、祈祷の読みもメリマスティックになっていき、プレーンソング(グレゴリアンチャント)として8~9世紀に形が整えられました。プレーンソングはポリフォニーの発達につれて衰退しましたが、イギリスの宗教改革で復興され、アングリカン・チャントとして18世紀までに確立されて、聖公会の教会音楽を特徴付けるものとなりました。

アングリカン・チャントは、古代の典礼の原則を回復して、言葉をメロディーよりも優先し、言葉自体が持つ自然なリズムで朗唱します。曲譜の音符はリズムを決めるものでなく、音の高さだけを示します。ですから、テキストを声にだして普通に読むことが、チャントの練習になります。単語の途中で切ったり、形容する単語と形容される単語の間で切ったりしません。また、よくありがちですが、音が動く前のところで切ったり、音が動くところでゆっくり歌ったり、長い文節をはやく歌ったりしません。普通に朗読する時と同じように、一定のペースが保たれなければなりません。

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