エビオン派の流れ :: 海辺のノート

エビオン派の流れ

27. December, 2013 • 0 Comments

【初代教会におけるユダヤ主義の分離 -3(2014/1/5週報のコラム)】

ユダヤ人クリスチャンの群れ、エビオン派は、グノーシス主義(*後述)と結びつきながら、幾つもの宗教を誕生させました。古代教会は、これらを異端として反駁しながら、自らの教理を形成していきました。

二世紀前半に生まれたエビオン派のひとつエルカイ派は、それ自体は小さな群れに過ぎませんでしたが、エルカイ(エルクサイ)の出身地のユーフラテス河の東方、メソポタミア南部で広まり、イスラムの創始者ムハンマドに影響を与えたと考えられています。また、アウグスティヌスが回心以前の一時期帰依していたことや中国まで伝えられていたことで知られるマニ教の教祖マニ(3世紀、イラン)の両親もエルカイ派の信者でした。

シリアのユダヤ人クリスチャンの群れには、他に「ナザレ派」として知られる人々もいて(* 初代教会の信徒の呼称とは別)、マタイ福音書に依拠した独自のアラム語福音書「ナザレ人福音書」を用いていたと伝えられています。エビオン派よりも律法の遵守について穏健であったと言われますが、詳しいことは分かっていません。

また、誕生の経緯は知られていませんが、現在もイラク南部に信者が現存するマンダ教も、その信者が信じているように洗礼者ヨハネの弟子集団に直接由来するのではなく、おそらくはエビオン派に由来する流れであると考えられます。「マンダ」は「知識(グノーシス)」を意味し、その名が示す通り、グノーシス主義の宗教ですが、アブラハム、モーセ、イエス、ムハンマドを偽の預言者と見なし、洗礼者ヨハネを真のメシアとして崇めます。

なお、グノーシス主義とは、1世紀に地中海世界に起こった二元論的な思想運動です。この世は真の善なる神によって創造されたのではなく、悪の神によって造られた不完全なものであり、人間の肉体はこの闇の世界に属するが、人間の魂(本来的自己)は光の世界に属し、真の神へと帰る「知識(グノーシス)」を得ることによって救われる、というような世界観を持っていて、様々な宗教と結びつき、それらを自らの解釈原理に従って取り込んで展開しました。3世紀に全盛期を迎え、5世紀には下火になりましたが、直接の継承関係はなくても、現代にも似たような構造を核にした宗教思想は見受けられます。

近年話題になった『マリアによる福音書』『ユダによる福音書』『トマスによる福音書』等を生み出したグノーシス主義の共同体は、キリスト教の中から派生したというよりも、キリスト教を取り込んで成立した別の固有性を持った宗教集団と見るべきものです。ただし、ヨハネ福音書を生み出した共同体のように、キリスト教の側からグノーシス主義の前駆的な二元論的思考を取り入れて神学を展開したケースもあって、判別し難い状況もあったと思われます。テモテの手紙Ⅰ6:20は、2世紀初頭には教会内でグノーシス主義が問題になっていたことを示しています。

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