WTO香港閣僚会議と、市民による抗議行動

26. December, 2005 • 0 Comments

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● WTO香港閣僚会議の結果

今回のWTO閣僚会議では、開催前から交渉の大枠合意が現実的でなくなっていたため、今後の交渉スケジュールや、「無税・無枠」など途上国への「配慮」、そしてWTOが破綻していないことを示す演出が焦点となった。

クリスチャン・エイドなどによる総括に基づいて会議の結果に関するポイントを紹介する。

※参考になるサイト:
TRADE JUSTICE MOVEMENT
CHRISTIAN AID
ATTAC JAPAN

● 交渉スケジュールをめぐって

 既に交渉スケジュールは、当初予定の日程から2年以上も遅れており、さらに長引く場合はWTO体制の崩壊に繋がりかねないと言われる状況になっている。今回の会議の結果、2006年末の一括合意の再確認と、関税引き下げ率などを盛り込んだ細目の合意期限を2006年4月末までに再設定することが決まって、「辛うじて危機を免れた」ことになっている。

 今回の会議におけるプロセスに関する変化で注目されるのは、大きな途上国のグループ=G-20が小さな途上国のグループ=G-90と組んだこと。これによって従来よりは交渉における途上国の立場は強いものとなったとも見られるが、一方でブラジルとインドが前回とは立場を変えて大国チームに加わったとも見られている。

 いずれにしても先進国と途上国、食料輸出国と輸入国の対立は根深く、農産品の関税削減率など利害がぶつかる難問はほとんどを先送りされた。また多くの決断がジュネーブのWTO本部や非公式閣僚会議での交渉に持ち越しになったということは、途上国のほとんどが交渉の蚊帳の外に置かれて密室の中で大国によって非民主的に事が進められるということである。

● 途上国への「配慮」をめぐって

 「輸出補助金の全廃期限(2013年)、後発発展途上国産品の無税無枠輸入の実施時期でも合意、一定の成果を挙げた」等と報道されている。しかしながら、輸出補助金全廃については、それによって実際に削られることになるであろう補助金はわずか5%以下と見込まれるに過ぎず、その他の補助金についても、改革される見込みはほとんどない。多くの小規模農家が既に苦しみの極にあることを考えれば、2013年という先の長い期限設定も空々しい身振りに過ぎない。また、後発発展途上国産品の無税無枠輸入については、多くの例外が残されているために、実際には最貧国から豊かな国への輸出が増える見込みは実際にはほとんどない。

 サービス(*)をめぐる議論は最も激しい対立を見せたが、水道、保健、教育などの分野で途上国がさらに自由化を進めざるをえないような、厳しいルールが新たに定められた、

(*) サービス産業の貿易は全貿易額の5分の1を占め、1兆5千億ドル 近い。その多くは米国とヨーロッパの超国家的サービス企業のもの(商 業、通信、建設と工事、流通、教育、環境、金融、保健と社会福祉、観 光、娯楽、文化とスポーツ、その他)。GATSは、公共事業(「政府権限 の行使として提供されるサービス」)を厳密に定義していて、中央銀行 ・軍隊・警察・司法組織だけが、これの対象外となっている。

 貧困国が貧しい農民を守るために設ける特別保護の対象品目の数に制限が設けられなかったことは成果と言えるだろう。しかし、それだけでは貧困国の農村の生活を守ることはできないのである。

● 市民による抗議行動

“KongYeeSaiMau(抗議世貿)”, “DOWN DOWN WTO”, “JUNK WTO”, “WTO OUT OF AGRICULTURE”, “WTO OUT OF EDUCATION”, “WTO OUT OF SERVICES”,「家族農家を壊すな」, “NO DEAL IS BETTER THAN BAD DEAL(最悪な合意よりも、交渉断念を!)”

シアトル(1999)、カンクン(2003)ほどではなかったものの、WTOに対する抗議者の声は再び世界に大きく響いた。特に韓国の農民の断固とした行動はめざましく、これまでWTOに関心がなかった人たちの認識をも改めさせるような力をもったものだった。

他の国連諸機関の会議と違ってWTOの交渉内容を把握することは容易ではないが、問題は、どのように合意するかではなく、WTO自体であるというのが、WTOによって生活を破壊され、貧困においやられている世界の民衆が上げている声である。

香港のマスメディアは「暴動だ」などと書き立てたが、それは予め描いていたシナリオで劇場化するような取り上げ方であったに過ぎなかったことは、実際にデモに参加した者や、その場に居合わせた市民には明らかだった。

グローバリゼーションをめぐっては、エキュメニカル運動は未だに明確な言葉を獲得しているとは言えない。「グローバリゼーションの負の側面と取り組む」アプローチ、「新自由主義的/企業グローバリゼーションと闘う」アプローチなどに分かれて対立しており、世界社会フォーラム、 WTOへの抗議行動などでのキリスト者のプレゼンスは小さなものに留まっている。来る世界教会協議会(WCC)の総会でも、この対立は全体を規定するダイナミクスの一つとなっている。

今回のWTO香港閣僚会議にあわせて、WCC・女性とグローバリゼーションに関するプログラム、アジア・キリスト教協議会(CCA)・都市農村宣教委員会(URM)、世界学生キリスト教連盟(WSCF)、そして「いのちのための平和 (Peace for Life)」などが抗議行動に参加し、ワークショップを持ったが、宗教者として、エキュメニカル運動として、抗議行動に貢献したというよりは、抗議に集まった農民や移住労働者から学んだという趣きが強かったことは否めない。南北間の教会の対話、農村における教会の働きがいま再び強く問われていることを感じさせられた。

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