グローバリゼーションと経済成長に関する神話

20. April, 2006 • 0 Comments

※ 米国の市民団体で、公正な報道を求めてマスメディアを監視しているFAIRが、4月11日に流した行動要請を訳しました。なお、批判の対象としているニューヨークタイムズの社説を参照して、補っている箇所があります。


4月10日のニューヨーク・タイムズの社説「優秀な政府はグローバル化を進めている」は、グローバリゼーションの恩恵を公共政策との関係で入念に示そうとするものだった。よりグローバル化された国はグローバル化していない国よりもインフレ率、法の支配など様々な尺度において優れていると様々な表を示しながら論じている。

執筆者のダラス連邦準備銀行のリチャード・W・フィッシャーとW・マイケル・コックスは、若年労働者の解雇を容易にするはずだったフランスの法案への反対運動を例にとって、「グローバル化した経済の現実が、いかに広範に大きく誤解されているかを示している」と述べ立てている。「労働者が世界経済の中で競争していることを理解していないから、大きな政府に職の保護を求めるということになるのだ。結果として、雇用は増えず、失業率は高まり、怠惰な労働者のために金がかかって膨張するばかりのセイフティーネットを作ることになるのだ。」

フィッシャーとコックスは、「よりグローバル化された国家は、より早い経済成長、低インフレ率、高賃金、より大きな経済的自由を実現できる政策をとり、グローバル化していない国家は市場に干渉し、経済の停滞にいたるような政策を取りがちだ」と主張する。「これらのデータが何か示しているとすれば、それは、グローバリゼーションが成長への競争を促すということである。経済成長を刺激し、その機会を広げるために、経済の重荷になるような政策を放棄させる圧力となっているのである。」

「企業にやさしい法人税」「金融市場の開放」といった点では、確かに、よりグローバル化された国の方が優れていると言えるだろう。フィッシャーとコックスの観点からすれば。しかし、そうした政策が、本当に高い経済成長率をもたらすのだろうか?国内総生産による経済成長率を、社説執筆者が援用した分類に従って比較してみよう。国連貿易開発会議(UNCTAD)の最新データ(2003-2004)で調べたところ、驚くべき結果が得られた。

社説執筆者の主張に反して、「最もグローバル化された国々」は、実際のところ、経済成長率が最も低いことが分かったのである(3.6%:米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、幾つかのヨーロッパ諸国、シンガポールなど)。「比較的グローバル化された国」は、それよりわずかに高い経済成長率を示している(3.7%:日本、韓国、マレーシア、パナマ、ほとんどのヨーロッパ諸国)。

これら2つのグループより、はるかに高い経済成長率を示しているのは、「あまりグローバル化していない国々」である(台湾、タイ、ウガンダ、ナイジェリア、メキシコ、アルゼンチン、ラテン・アメリカ、ルーマニアやウクライネ)。これらの国々の経済成長率は6.2%である。

最も高い経済成長率を示しているのは「最もグローバル化していない国々」「市場に干渉し、経済の停滞にいたるような政策を取っている国々」である(6.3%:中国、インド、ロシア、ブラジル、ベネズエラ)。

(もっとも、国内総生産の42%を輸出によっている中国を「最もグローバル化していない国々」に分類しているのを見れば、この分類自体が疑問になるわけだが。※米国の国内総生産における輸出の割合は7%)

では、このデータによって、グローバリゼーションに抵抗することが高い経済成長率に繋がると言えるだろうか?もちろん、そうは言えない。例えば、「最もグローバル化していない国々」は一般に低開発の状態から出発しているという事実など、様々な条件を考えに入れる必要がある。しかし、これらの実際の経済成長率を見れば、企業寄りの政策を取れば経済成長率を高めることができるという、社説執筆者の安易な主張には疑問を持たざるを得ない。

ニューヨークタイムズは、読者に誤解を与えるこのような主張を社説欄で流す前に、事実確認を行うべきであった。何故、主張の正しさを検証できる経済成長率という明白なデータを紹介しなかったのか、問い合わせよう。

●問い合わせ先:
David Shipley, Op-Ed Page Editor
New York Times
oped@nytimes.com
(212) 556-3652

問題のニューヨークタイムズの社説(転載サイト)

国連の統計

※原文:ACTION ALERT “Globalization vs. Growth – NYT op-ed omits stats that debunk pro-corporate claims”(4/11/2006)

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