牢獄化したベツレヘムとクリスチャン・コミュニティ :: 海辺のノート

牢獄化したベツレヘムとクリスチャン・コミュニティ

27. January, 2007 • 0 Comments

~オープン・ベツレヘムによる調査の紹介

ベツレヘムでは、イスラエルによる分離壁建設が始まって以来、急速にキリスト教人口が減少しており、現在のような状況が続けば2世代も経ないで消滅するだろうと懸念されています。分離壁建設と紛争激化によって経済が破綻し、住民の70%が貧困ライン以下、失業率は60%以上になっています。この事態を打開するために作られたキャンペーン組織オープン・ベツレヘムが米国とベツレヘムで行った調査の報告が出されました。

米国人の多くがベツレヘムがパレスチナ自治区内にあることを知らず、そこに住んでいるのはユダヤ教徒とイスラム教徒と考えていること、ベツレヘムにおけるキリスト教徒減少の原因はイスラム過激派にあると考え、イスラエル政府の政策が原因であると考える人はごく少数であること。それに対して、ベツレヘムのキリスト教徒の多くが移住の理由としてあげているのはイスラエルによる占領であるということ。イスラエルによる分離壁建設を支持する米国の保守派にはベツレヘムのキリスト教遺産の保護に強い関心が見られるが、ベツレヘムのキリスト教徒の多くが現在の危機の原因としてイスラエルの占領と分離壁建設を挙げていること。2つの調査を読み比べると、こうしたことが読みとれます。以下にそれぞれの調査概要を紹介します。

☆ 報告はオープン・ベツレヘムのサイトにあります:
http://www.openbethlehem.org/

なお、この報告の発表は、2006年12月20日、カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ師父、ウェストミンスター大司教コルマック・マーフィーオコーナー枢機卿、バプテスト世界連盟会長デイヴィッド・コフィー牧師らのベツレヘム訪問に合わせて行われました。

「私たちは歴史的に興味深い場所としてベツレヘムを訪ねたわけではありません。博物館を訪ねに来たのではありません。テーマパークを訪ねに来たのではありません。私たちは、人間を解放する神の自由を、まさにその存在自体によって語る場所と人々を訪ねに来たのです。神の自由が人間を解放することは、日が変わっても年が変わっても世紀が変わっても変わることのない真実です。私たちをここに引き寄せたのは、その福音です。皆さんの置かれているような恐ろしい境遇にあってもなお絶望するなと私たちに教えるのは、その福音です。」(ローワン・ウェリアムズ師父)

☆ David Coffey牧師の訪問記
http://www.bwanet.org/News/07Jan-Mar/coffeybethlehem.htm
☆ カンタベリー大主教
- ベツレヘムでのメッセージ
http://www.archbishopofcanterbury.org/releases/061222.htm
- クリスマス・メッセージ
http://www.archbishopofcanterbury.org/sermons_speeches/061225.htm
☆ ウェストミンスター大司教のクリスマス・メッセージ
http://www.rcdow.org.uk/cardinal/default.asp?content_ref=1138

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◆ ベツレヘムに関する基礎知識 (*1)

ベツレヘム内外に建設されている分離壁によって、ベツレヘムはその市街中心部だけに縮減されました。分離壁は、市街中心部を、何千エーカーもの農地、水源地から切り離しています。ベツレヘム地方には、パレスチナ人から没収した土地に27のイスラエル入植地が作られています。分離壁が完成すれば全部で70%の土地が失われてしまいます。

コンクリートの壁、電気が流されているフェンス、イスラエル人入植者だけが利用できる道路の建設、そして検問所によって、ベツレヘムはそこに住む人々にとって牢獄のような環境となっています。世界銀行は、人道的危機は、これらのイスラエルの施策が直接の原因であると述べています。

ベツレヘムの住民の70%が貧困ライン以下の生活をしています。失業率は60%を超えます。ベツレヘムの経済の65%は観光業に依存しています。しかし、今やほとんど完全にイスラエルの業者によって支配されるようになって、ベツレヘムを訪れる人はほんの数時間しか滞在しなくなりました。2000年には22.1%の使用率だったホテルが、2005年にはわずか2.5%に落ち込んでいます。

ベツレヘムのキリスト教人口は、市街地で41.3%、地方全体で26%です。2001年~2002年のイスラエル軍侵攻によって、キリスト教人口はその10%、3000人(357家族)を失いました。(*2)

キリスト教人口の流出は、長い歴史にわたって宗教的多様性をその特徴としてきたパレスチナにとって深刻な脅威です。イスラエルの分離壁は、諸教会の教区を細かく分断し、信徒を教会から分断し、家族を分断しています。

(*1) このセクションは、カンタベリー大主教のベツレヘム訪問に関するアングリカン・コミュニオンの記事の一部を翻訳したものです。
(*2) 国連人道問題調整事務所の報告(2004/10)
http://www.reliefweb.int/library/documents/2004/ocha-opt-20dec.pdf

※ 聖地のクリスチャンの難民化・移住:1948年にパレスチナのキリスト教人口の37%が失われました。残りの20%は1967年から1994年の間に失われました。1917年にパレスチナ全体で約10%だったキリスト教人口は、今は1.5%以下になっています。(Dr Bernard Sabella, Bethlehem University)

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◆ ベツレヘムでの調査概要

Palestinian Centre for Research and Cultural Dialogueに委託され、市街3ヶ所に住む1000人への聞き取りによって行われました。回答者の内、キリスト教徒とイスラム教徒はおよそ半々でした。以下は、その結果の抜粋です。

○ 87.5%のイスラム教徒がキリスト教徒の友人を持つと答え、92.2%のキリスト教徒がイスラム教徒の友人を持つと答えました。

○ 主要な問題:失業 22.4%、移民 5.9%、イスラエルによる土地没収4.3%、これら全て 67.4%
○ 現在の危機の原因:イスラエルによる占領 38.1%、分離壁 39.7%、パレスチナ社会内部の分裂 19.2%

○ キリスト教徒の住民がベツレヘムを去る理由:イスラエルによる占領78%、イスラム原理主義の台頭 3.2%、これら両方 12.5%
○ 75%の住民は、家族が外国に移住していくことで消沈していると答えました。残ることを選択した人々の内、20.5%は仕事や家族が理由であると答えました。
○ 63.2%のキリスト教徒は、少なくとも家族の1人が外国に移住したと答えました。イスラム教徒の場合は、32.8%でした。内、既に家族のほとんどが移住した人は、キリスト教徒の場合で20.1%、イスラム教徒の場合で5.4%でした。
○ 移住を考えたことがある人は、キリスト教徒で50.7%、イスラム教徒で43.6%でした。
○ 移住を準備している人は、キリスト教徒で15.7%、イスラム教徒で8.3 %でした。内、19.2%は青年で、36%は学士号以上の学位を持つ者でした。また、72.45%が男性でした。

○ イスラエルによって土地を没収された親族がいる者は、キリスト教徒で54.7%、イスラム教徒で 41.7%でした。
○ イスラエルによって家族や友人を政治的理由によって逮捕された者は65.3%、イスラム教徒で74.5%、キリスト教徒で59%でした。
○ イスラエル軍によって家族や友人を殺害された者は41.5%、イスラム教徒で53.9%、キリスト教徒で32.9%でした。

○ キリスト教徒の65.9%は、イスラエル政府は、キリスト教の遺産に対して残忍さや無関心を示していると答えました(60歳以上では76%)
○ キリスト教徒の73.3%は、パレスチナ自治政府は、キリスト教の遺産に対して敬意をもって扱っていると答えました。

○ 国際社会の取り組みの欠如の原因と考えるものについて、ベツレヘム住民の43.1%は、イスラエルを支持する圧力団体への恐れを挙げ、14.2%は理解の欠如、17.9%は無関心を挙げました。

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◆ 米国での調査概要

この調査は、ベツレヘムの町とそれが直面する諸問題についての米国人の考えと意識について行われました。Zogby Internationalに委託され、15000人への電話インタビューによって行われました(“The Way Forward: Potential for a More Open Bethlehem”)。以下に、紹介するのはその要約です。

○ 一般的知識:
その歴史的、宗教的な重要性にもかかわらず、ベツレヘムについての認識は限られたものです。ベツレヘムの町に関する考えを聞かれて、22%は、答えられるほどの知識がないと答えました。58%はベツレヘムはイスラエル内にあると答え、パレスチナ自治区内にあると正しく答えた人は27%でした。ベツレヘムでキリスト教人口が約半数を占めると正しく答えた人はわずか3%でした。調査の全体を通して、2割から3割の人が、質問に対してよく分からないと答えたことが特徴的です。

○ ベツレヘムの現在の状況:
ベツレヘムが直面している最大の問題の1つは、イスラエルがベツレヘムの内部および周囲に建設している分離壁です。37%の回答者は、分離壁について知らないと答え、残りの人々の半数(32%)は分離壁建設を支持すると答え、半数(32%)は分離壁建設に反対すると答えました。回答者の41%は分離壁はイスラエルの安全のために必要と信じると答えましたが、一方で分離壁が地域住民に課す代償への高い懸念も示されました。分離壁建設を支持しない理由として、3人に2人は、ベツレヘムとエルサレムが分断されることと地域住民の生活への悪影響を指摘しました。

○ ベツレヘムへの関心と観光:
ベツレヘムに行ったことがある人は回答者の4%でした。約半数(48%)が行ってみたいと答えましたが、実際に行くだろうと答えた人は18%でした。ベツレヘムの歴史と文化への関心から行ってみたいと思う人は多いものの、56%の人々は行くには安全でないと考えています。実際、ベツレヘム観光の最大の障害となっているのは、暴力の脅威と身の安全への懸念です。ただし、暴力は、ベツレヘムへの印象を聞かれたときに最初に思い浮かべられるものでないことは留意されるべきでしょう。多くの人は、聖書・歴史との関係で答えると思われます。

○ 回答者の所属グループによる違い:
ベツレヘムの状況に関して懸念と支援への関心がもっとも強く見られたのは、キリスト教徒においてで(カトリック、プロテスタントの両方)、特にボーンアゲイン・クリスチャンや週に1度は礼拝に参加している人において強く見られます(観光への関心も同様)。自らを保守派、あるいは超保守派と考える人、また共和党派と考える人においても同様です。しかしながら、この傾向は、保守派の伝統的な政治的立場と相容れない場合には該当しません。例えばベツレヘムをユネスコの世界遺産に登録することに関しては、国連に対する保守派の保留的態度が勝って、ボーンアゲイン・クリスチャンや保守派、超保守派の支持は相対的に低くなります。分離壁に関する場合など、イスラエルへの支持がベツレヘム住民の利益と反する場合も同様です。

○ 結論:
概して限定的な米国人のベツレヘムに関する知識にもかかわらず、回答者の8割がイエス・キリストの生誕の地を保存するためにもっと力を入れるべきだと答えています。回答者の66%は、ユネスコは例外措置をとってでもベツレヘムを世界遺産と宣言するべきだと答えています(※パレスチナ自治政府は国連の正加盟国でないために申請資格がない)。また、多くの米国人は、ベツレヘムのキリスト教徒のコミュニティを守ることは、聖地のキリスト教遺産を守るためにも(71%)、キリスト教界全体にとっても(43%)、重要だと信じています。44%以上の回答者が、そのためのベツレヘム住民の働きを支援したり、献金をするだろうと答えました。

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